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12月 19, 2011

世界が目を付けた“原石” 成長株ベンチャーのオフィスを訪ねる

世界が有望株として目を付ける日本発ベンチャーの“実像”はいかに――。欧米のベンチャーキャピタル(VC)が出資したインターネット翻訳サービスのmyGengo(マイゲンゴ、東京・渋谷)と、インテルのVC部門、インテルキャピタルが投資したセキュリティーソフト開発のワンビ(同)の本社を訪ねた。

JR中央線千駄ケ谷駅から徒歩10分強の住宅街にあるマンションの3階。玄関で靴を脱いでマイゲンゴのオフィスに上がると、所狭しと置かれた机の上のパソコンに向かう技術者らの姿が飛び込んできた。壁には世界各都市の時刻を示す時計がいくつもかかっている。

同社は世界約4000人の翻訳家をネット経由で束ね、16カ国語の文章翻訳を割安価格で世界中のネット利用者へと提供する。ベンチャーとはいえ、れっきとした「グローバルカンパニー」だ。

オーストラリアと英国の二重国籍を持ち、日本でウェブデザイナーをしていたロバート・ラング最高経営責任者(CEO)と、アメリカ人と日本人のハーフでソニー出身のマシュー・ロメイン最高技術責任者(CTO)が2009年に設立した。

現在の社員は20人前後で、社員の国籍はバラバラ。社内では、英語が事実上の公用語になっている。

米グーグル傘下のユーチューブでシニアプロダクトマネジャーを務めた経歴を持つ徳生裕人マーケティング・ディレクターは「ここでは各国から集まった人材が能力を持ち寄って新サービスを構築している。オフィスの雰囲気はシリコンバレーのベンチャーと変わらない」と話す。

成長期のマイゲンゴには「毎週、新しい社員が入ってくる。最近は自己紹介してばかり」(創業時から参画するコーポレート・セールス担当の村上綾美氏)。いまも社員を積極採用中。現在のマンションの部屋ははやくも手狭になっており、さらなる成長に向かって新社屋へ巣立つのも間近だろう。

今年11月にインテルの出資を受けたワンビの本社も新宿駅からほど近い雑居ビルの1室にある。現在の従業員数は7人。飾り気のないスチール製の机が並ぶオフィスは「世界デビュー」を果たした注目ベンチャーにはとても見えない。

「インテルキャピタルの責任者にも『経費を無駄に使っていない、つつましいオフィス』と褒められた」(ワンビの加藤貴社長)。インテルから受けた成長資金を元手に「来年には従業員数を15人ぐらいに増やしたい」という。

「ネットのチカラ」を活用することで起業コストは下がり、日本からでも世界を相手にいつでもサービスが展開できるようになった。「実質的な本社は東京に構えているが、本当の“本社”はネットの中にあるのかもしれない」(マイゲンゴのロメインCTO)。

ガレージから世界に挑戦した米ヒューレット・パッカード(HP)や米アップルのように、東京のマンションの一室から有力なグローバル企業が誕生する日も近いかもしれない。

(田中暁人)

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