メディア掲載
4月 21, 2014
日米クラウドベンチャー9社が東京に集結 初イベントで語られた未来像
「ホワイトカラーの生産力向上にはクラウドサービスが欠かせない」。先進的なクラウドサービスを展開する日米のクラウドベンチャー9社が一同に集い、日本市場の展望を議論する「CloudBrite(クラウドブライト)サミット」(同実行委員会主催)が今月(4月)17日に初めて東京で開かれ、12人のキーパーソンが意見を交わした。停滞した日本のビジネスや働き方を変革するためにクラウドが果たす役割とは――。
ゼンデスクなどが呼び掛け日米9社が初めて集う
CloudBriteサミットは、ヘルプデスク管理ソフトを140カ国で展開する米Zendesk(ゼンデスク)などの呼びかけに、リンクトイン・ジャパンやEvernote(エバーノート)など日本に法人や支社を置く米国のクラウドベンチャー6社と、Sansanやサイボウズなど国内で起業した3社が呼応。9社で共同開催した初のイベントだ。
当日はZendeskの創業者であるミッケル・スヴェーンCEOが来日し、「クラウドは世界中を席巻し、世界はクラウド化が進んでいる。クラウドサービスはビジネス成功への軌道だ」と檄を飛ばした。
基調講演に登壇したネットイヤーグループの石黒不二代CEOは、少子化で日本の生産年齢人口が減っているにも関わらず、先進諸国に比べてホワイトカラーの生産性が低いことを挙げ、「雑務に時間を取られたり、“やったもん負け”の人事制度だったり、組織は縦割りで、働き場所もオフィスだけ。日常業務はITに任せ、社員はどこでも働けるようにするべきだ」と強く訴えた。
日本のビジネス現場の課題や市場の特徴を議論
主催した9社のクラウドベンチャーからは、日本のビジネスにクラウドサービスが与える影響や、クラウド市場の展望に関する提言や意見が次々と飛び出した。
Web上でアンケートを実施できるサービスを展開する米SurveyMonkey(サーベイモンキー)のジョン・コーエン副社長は、日米のビジネスマンに対して行った市場調査を紹介。社外や社内組織を超えた“コラボレーション”を実践している割合が日本では低かった点をあげ、「明らかに変化をしなければならない時だ。より生産性をあげるため、コラボレーションを生み出せるような改善が必要だ」と指摘した。
日本で起業し、現在は米国に本拠を置くGinzaMetrics(ギンザメトリクス)は、検索エンジン最適化のクラウドサービスを日米で展開する。レイ・グリセルフーバーCEOは「米国では、生産性の向上やコラボレーションは価値のあることだと思われているので、いちいち説明する必要はないが、日本ではあまりピンとこないようだった」と流暢な日本語で話す。
日本市場の特徴については、リンクトイン・ジャパンの杉本隆一郎代表代行が「日本でクラウドサービスを紹介すると、必ず『どこが使っていますか?』と他社の事例を聞かれる」との現状を明かす。
オンラインストレージ「Box」を世界で展開する米Box社の日本法人ボックス・ジャパンは古市克典社長が登壇。ベリサインの前社長もつとめた古市社長は、「日本企業がクラウドサービスを使うにあたっては特にセキュリティ面が重視される。そのためには通信経路を暗号化することと、社内からの不正漏洩を防ぐことが重要だ」とアドバイスした。
いいサービスを組み合わせてシステムを作ることが可能に
投資利益率(ROI)の観点からクラウドサービスを考えるパネルディスカッションでは、Sansanの富岡圭取締役が「最初、名刺管理サービスの導入を勧める際にもROIという観点の話がよく出た。ROIなんてテーマが笑い話になるようにしたい」と話した。サイボウズの青野慶久社長は「いいサービスを組み合わせてシステム作ることがROIを下げるコツだ」との考え方を示した。
一方、格安の翻訳サービスを日米で展開するGengo(ゲンゴ)の販売・事業開発アジア統括責任者をつとめる野村佳史氏は「資料は英語で作らねばならない日本の有名企業も多い。そうした時にGengoを使い、ホワイトカラーがやるべきことだけにフォーカスすれば、生産性を上げられる」と述べていた。
Evernote Japanの井上健ジェネラル・マネージャーは、「今回紹介された9社のサービスのうち、Evernote Japanでは7つを使っている。それだけベンチャー界でもクラウドサービスは浸透している」とまとめた。
日米のクラウドベンチャーが集まった初のイベントには、約300名の聴衆が参加。各社の担当者と交流ができる場も設けられ、真剣に導入を相談するビジネスパーソンも目立っていた。主催者側では、今後も定期的にこうしたイベントを行っていきたい考えだ。
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