グローバル化の鼓動: LocWorldとTAUSの設立者にインタビュー

ローカリゼーションワールド (LocWorld) と翻訳自動化ユーザー協会 (TAUS) のイベントは、グローバリゼーション業界の専門家達がアイディア、経験談の共有、そして新しいツールやサービスを発表する上で中核的存在の場です。それぞれの設立者であるUlrich HenesJaap van der Meer は、何十年もの間、翻訳および ローカリゼーション業界の最前線でこのフィールド全体を観察して(それに自ら変化を加えて)きました。光栄にも、設立者のお二方を弊社ブログに招き、LocWorld やTAUS、そしてグローバル化に関するあらゆるトピックについてお話する機会を頂きました。

ようこそ、Ulrich、Jaap! お2人が初めて会った時の事、長年に渡ってお互いが一緒に働くようになった経緯を教えてください。

Ulrich: 確か、実際にJaapに対面したのは、80年代後半サンフランシスコでのソフトウェア出版社協会 (SPA) の会議だったと思います。彼の会社 INK を代表してLocalization Industry Standards Association (LISAは現在倒産しております。) のパネルメンバーの1人でした。私は当時 AlphaCRC の新入社員で、業界での認知度を上げる為に、パネルに沢山の質問を投げかけていました。そこで彼と知りあう機会があり、1999年の Dublin Localization Summit (ダブリンローカリゼーションサミット) で実際にコラボレーションを開始しました。Jaapはシアトルで 2003年に開催された初の LocWorld に参加し、MT ワークショップを主導しました。これがきっかけで、彼は3~4年の間、ローカリゼーションワールドのプログラム管理を任されるようになり、私はMultiLingual ComputingDonna Parrishと共にビジネス面の管理を取り仕切ることになりました。その後、Jaapは TAUS を立ち上げ、それだけに集中することになり、Donnaと私がDaniel Goldschmidtの助けを借りてLocWorld プログラムを引き継ぎました。

Jaap: TAUS 設立後数年間、Ulrich とのコラボレーションの機会が沢山ありました。例えば、TAUS と Localization Institute 共同のクオリティモデルやトレーニングなどです。あともちろん、TAUS とローカリゼーションワールドのイベントは共同設置されたり隣接される傾向にあるので、会う機会は頻繁にありました。一緒に仕事ができて光栄に思います。

Ulrich: 私も Jaapと一緒に仕事する事を本当に楽しんでいます。私も Jaapも、ローカリゼーション業界への貢献に強い信念を抱いており、2014年には更に密接に協働することになります! LocWorld に相次ぎ開催されるTAUS 独自のイベントに加え、6月のダブリンで行う、ローカライゼーションワールドでは、TAUS のセッションも行います。これは今ここで初めてお知らせしました!

翻訳やローカリゼーションの分野で働く人たちはよくLocWorld を買い手、売り手の出会う大規模マーケットプレイスと表現し、TAUS のイベントは小規模なディスカッションやディベート用フォーラムだと言います。お二人の意図はその通りですか?

Jaap: LocWorld は業界最大のイベントです。確かに業界にとって「出会いの場所」であると言えます。TAUS は、私が80年代後半から90年代初めにアカデミックの会議で多くのセッションを開催していたことがきっかけになり、LocWorld は成長しつつあります。これにより、翻訳の科学的側面だけでなく、翻訳がいかにビジネスに影響を与えるかを探索することに興味を持つようになりました。TAUS は企業がグローバル化の技術革新を発展させ、結果を測定し、提供品をベンチマーク・評価する上での支援を目的に形成されました。 そしてそのうち、翻訳データ共有のコンセプトを含むようになりました。これら全てがTAUSイベントのテーマとなっています。

Ulrich: Donna も私も、ローカリゼーションを業界のコミュニティーセンター、つまり、何が商業向けで何がそうでないか、安全で透明性のある機能的な業界フォーラムと考えています。2014年は、ダブリンを始めこのコミュニティーコンセプトを更に採用していき、プロフェッショナル開発のセッションやコンサルタントの懇談会を含むジョブ・フェアも追加していきます。

長年の間、LocWorld と TAUS の会議はどちらも素晴らしい基調講演者の方々を多く迎えてきました。破壊的イノベーションの面で一番印象に残った講演者を教えてください。そしてその理由もぜひ聞かせ下さい。

Ulrich: 私は破壊性の面では、2007年の LocWorld で処女作執筆中に翻訳のクラウドソーシングについて講演したWiredのJeff Howe を選びますね。彼はクラウドを翻訳に繋げる事を考えてもいなかったのですが、当会議がそれらを繋ぎ合わせました。クラウド翻訳は当時の人々にとっては馴染みのないものでしたので、まさに破壊的だったと言えるでしょう。その結果はご覧のとおり! 2010年ベルリンでの LocWorld で「ユビキタス・コンピューティングの幕開け時代」について語ったAdam Greenfield。 また、WiredのChris Anderson による、業界の将来としての「自由な」翻訳についての講演も印象に残っています。これら3人の講演者たちはこの業界の重要な破壊的変化を見事に予示しました。

Jaap: これは「破壊的」というカテゴリーには当てはまらないかもしれませんが、私が素晴らしいと思ったもう1人方は、今年の Santa Clara の LocWorld で講演したエコノミストの Robert Lane Green です。英語が我々の共通語ではありませんが、彼の言語分析への新鮮なアプローチが気に入りました。TAUS は今後世界では、言語多様性へと傾いていくと考えています。また、Intel の「レジデント人類学者」Genevieve Bell を迎え、コンテクストと言語がいかにコンピューティングの未来に影響を与えているかについてお話ししてもらいました。興味深いですね。

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ここ数年に渡って目にしてきた破壊的イノベーションの主要な局面についてどの様にお考えですか? 何をもって破壊的と見なしますか?

Jaap: TAUS では、業界の進展における3つの局面: グローバリゼーション、インテグレーション、コンバージェンスについて話し合います。翻訳メモリー、ワークフロー、そして集中言語アセットなどは全て製品及びウェブサイトのグローバル化を促進する為に作られたツールの例です。また、企業はこれらグローバル化ツールをコンテンツ管理システムやオーサリングツールに繋げ始めました。しかし今や、翻訳が公共事業の様にあらゆるところで利用されるコンバージェンス(収束) の時代に差し掛かっています。多大な変化ではありますが、そのオプションは無数にあります。現在、200億ドルにもなる翻訳市場をコントロールしている組織の数はたったの10,000ほどです。しかし、無料のリアルタイム翻訳を求めてボタンをクリックするインターネットユーザーは世界中で10億人います。これはコンバージェンスの一部であり、Google Glass や NTT Docomo の瞬時翻訳メガネなどのウェアラブル端末により更に加速するでしょう。翻訳業界はこれら変化の中で陣営を固めようと試みていますが、その多くは業界外から駆り立てられています。

Ulrich: まさに先見者とも言うべき Jaapとの仕事は本当に楽しいです! 私は、業界内コミュニケーションの促進により集中しているのですが、Jaapのコメントにも同意します。—まさにこれこそが私達の向かっている先だと思います。

Gengoでは、お客様がコンテンツのニーズに合わせて組み合わせることのできる「ビュッフェ」として翻訳アプローチのあらゆる選択肢について話し合います。翻訳のクラウドソーシングをそのビュッフェに入れ込むサービスと考え、その他のオプションと並行してクラウドソーシングを上手く利用する為の基準は何だと思いますか?

Jaap: 「ビュッフェ」は幅広いオプションを提供してくれます。従来の「ひとつの品質が全てに当てはまる」とする一方向の翻訳方法はもはや終わりです。新しい方法は、ユーティリティや適時性、センチメント、オーディエンス、目的などによりセグメント化しながらコンテンツをプロフィール分析することです。品質目標はもはや静的ではなくなったからこそ、私達は「TAUS 動的品質フレームワーク」を開始しました。より高い品質が必要なプロジェクトもあれば、そこまでの高品質を必要としないものもあります。プロファイリング基準に共に取り組み、共有可能な業界インテリジェンスや買い手と売り手のための明白な基準を作成すれば、市場の混乱が軽減されるでしょう。

Ulrich: 初期の懇談会では、共通してツールの不足または専有ツールしか無い事についての不服を耳にしました。今では手に余るほどのツールがあり、その多くは相互運用可能なものです。Clay Tablet は業界における相互運用性向上の一例です。5年後には全ての交流や交差インスピレーションが業界の景観を変えることになるでしょう。

グローバリゼーションの買い手と売り手は将来どのように破壊的イノベーションを促進できるでしょうか? また、破壊的イノベーションは今後どのような「至るところでの翻訳」に溶け込んでいくと思いますか?

Jaap: これはまさに今 TAUS のサイトにもある記事のトピックなんです。今こそ、大計画: 「ヒューマン・ランゲージ・プロジェクト」実行の時です。欧州議会が、ヨーロッパ内の多言語使用における様々な課題についてプレゼンテーションする為、招待状を発行しました。2014年には新規の資金調達があります。大きな何かを行う余裕が十分にあります! 数年前までは、破壊的イノベーションを先導している会社の名前は1~2社ほどしか挙げることができませんでした。今では、インターネットと改良された検索ツールのおかげで、破壊的イノベーションはどんどん広がっています。

Ulrich: 破壊的開発は自然なプロセスです。「より安く、より早く、より良く」の基準に合格する新しいアイディアを輩出すれば、採用される可能性は高くなります。そのうちいくつかは廃棄されたり、将来的に他のアイディアへと繋がります。この様な事を話し合えるイベントを作り上げ、業界での導入に繋げるのが自分の役目だと思っています。業界の仲間と共に学び、話し合える事は、自分の会社のイノベーションを促進させる上での最善策の一つだと言えるでしょう!

Ulrich、Jaap、お二方の考え方の共有、業界にインスピレーションとコラボレーションの機会を頂き本当にありがとうございました!


Jessica Roland

The author

Jessica Roland

Jessica is Senior Director of Sales Development at Gengo. She comes from the client side of localization, with 15+ years of taking software products and websites global, for companies like EMC/Documentum, Yahoo! and Glassdoor. She loves working with industry colleagues to help influence the direction of globalization technology and practices, building toward a future where translation is everywhere!


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