グローバリゼーションが引き起こす言語の進化
言語は絶えず進化しており、特に「語彙借用」は目まぐるしい変化を遂げています。
「語彙借用」とは、元の言語が翻訳した言語にそのままの形で使用される「借用語 (例: butterとバターやtobaccoとタバコ)」や、借用元の言語の意味をなぞり翻訳して取り入れる「翻訳借用 (例: keyboardと鍵盤やfootnoteと脚注)」をまとめたものを指します。グローバリゼーションにより、以前は交わることのなかった言語が交わり、多くの言葉が誕生しています。
語彙借用を「借用」と呼ぶのはあまり適切ではないかもしれません。なぜなら、「借りた」語句が元の言語に返されることはありません。しかし、日本語の「アニメ (anime)」のように、英語の「animation」が日本の文化に浸透し「アニメ (anime)」とう日本語が英語圏の国でもそのまま使われるケースもあります。
私は以前、青果店で働いていたときにフランス人のお客さんに「champignons (フランス語でキノコ)」がどこにあるかと聞かれ、すぐに「mushrooms (英語でキノコの意味)」のことだと理解することができました。私は直感的にフランス語のなごりをこの単語から感じ取ることができたのだと思います。実は、英語への言語的借用の最も古い例がノルマン フレンチの語句のアングロ サクソン語への転移であり、今でも英語の語句のほぼ半数がこの時代の言語的借用です。
また、日本人のお客さんに「ピーマン (フランス語の「piment」からの借用語)」はないかと聞かれたこともあります。日本語の借用語の8割以上が英語から来ていると言われているため、日本人は借用語に対してとても敏感で、借用語を書き表す際にはあえてカタカナで表記します。残念ながら、「ピーマン」は英語に由来していませんでしたが、言葉の元を辿るのはとても面白いことです。
私が一番興味深いと思う語彙借用の例は、「concrete」をあらわす中国語です。中国語の語彙の借用法は、ちょっと特殊です。なぜなら、借用した語彙を昔からある中国語の言葉と区別がつかなくなるまで同化してしまうからです。中国語で「concrete」を意味する単語は、「混凝土 (hùnníngtŭ)」です。ここで使われている漢字は「混ぜられて固められた土」を意味し、見かけ上は完全に、もとから中国語にあった単語のようです。
多くの中国語話者は気づいていませんが、中国は20世紀半ば、近代化のために、すでに19世紀後半から近代化への道を歩み始めていた日本から大量の語句を借用しています。日本語も漢字を使っているので、かなりの手間が省けたのです。違いは、日本では「混凝土」は「konkurīto(コンクリート)」と読まれ、英語の「concrete」からの借用語だということがすぐわかる点です。そのうえ、日本人はこの単語を使うとき、こうした漢字はもう使わずにカタカナで書くようになったので、この中国語の単語から英語から来たことに気づくのはさらに難しくなりました。
英語から日本語に借用された「concrete」は、英語のスペルは失われたものの、オリジナルの発音に似た音が一部保持されました。その後、日本語から中国語に借用された「concrete」では、日本語での漢字表記 (この漢字表記は、日本では現在は使われていません) は残されましたが、英語的な発音は消えてしまいました。そして現在では、中国人も、日本人も、英語を話す人々も、この単語が借用に借用を重ねた単語だということに気づいている人はほとんどいないでしょう。
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