グローバル化の鼓動: 「国境なき翻訳者」へのインタビュー

当ブログでは、企業のグローバル化の支援についてよくお話しします。今回は、人々の生活を改善する (時には命を助ける) 上で翻訳が果たしている重要な役割にスポットライトを当ててみました。

Translators Without Borders (国境なき翻訳者、以下「TWB」) は翻訳者、企業、そして非営利団体の架け橋となり、多言語による医療や教育、そして危機救済関連の情報へのアクセス増加に努めています。最近、TWBの功績や今後の課題、展望について同組織の共同設立者兼社長であるLori Thicke氏に話を伺いました。

個人的な話になりますが、TWBでの仕事と、ご自身の会社Lexceleraを先頭に
立って率いる仕事との間で、バランスを上手く取る秘訣はありますか? 眠る時間
もないのでは?

確かに大変ですが、私は何千人といるTWBボランティアの1人です。各人が、自分達の本来の仕事とボランティアの仕事の間のバランスをどうにか見つけているのです。私は、立ち上がってストレッチすることを忘れないように、アプリのリマインダー機能を使っていいます!

people_need

この1年間で、TWBで見られた主な変化とは何ですか?

TWBでは、これまで1400万ワード以上が翻訳され、今もその規模は拡大しています。ナイロビでは、地元翻訳者養成のためのセンターが開始されました。Wikipediaをスワヒリ語に翻訳し、医療関係者のための携帯電話用ヘルスケア関連アプリに取り組んでおり、地域保健の改善に努めています。ケニアでは前回の選挙期間中、暴力行為を抑える為に (前回の選挙では1000人もの死者が出ました)、TWBはUshahidi (ケニアの非営利会社) と提携して、ケニアで使用されるSMSメッセージ11の言語から英語にリアルタイムで翻訳しました (24時間の交代体制対応)。先日、Ushahidiの人たちと話す機会があり、市民のメッセージを翻訳したおかげで救われた命があった、そして (ご存知の通り) 選挙が全て平和に終了した、と嬉しい言葉を頂戴しました。Worldreaderと協同し取り組んだ地元の子供達の読み書き能力向上の為の、アフリカの物語本プロジェクトがあります。

TWBではその他、世界各地の災害救済の分野でも支援しています。ハイチでは、メッセージの数々を英語からクリオール語に翻訳しましたが、その時以来、当組織の規模は拡大したこともあり、最近起こったフィリピンでの災害時には、台風災害救済活動の公式合同チームの一員として国連から活動要請がありました。災害救済メッセージを人々に母国語で配信することの重要性は、いくら強調してもしきれません。Doctors without Borders (国境なき医師団) のある医師によると、我々が出動する以前は、「Storm Surge (高潮)」という英語の警告メッセージが地元民に届いていたそうです。しかし、多くの人が「Storm Surge」の意味が分からず、高潮に飲まれ亡くなってしまう結果となりました。フィリピンでは現在も、当組織の翻訳者1名が継続支援を行っています。

TWBでは、どのような指標を使って組織の経時的な成長や成果を確認していますか?

TWBでは、対応した非政府組織 (NGO) の数や、配信ワード数、翻訳者数、そして取り組んだ言語の数を主な指標としています。TBWの次回ニュースレターにも、これら指標についての情報が掲載されます。個人の翻訳者の場合、Proz.com のバッジ式システムにより、TWBの翻訳者によって寄付されたワード数が各翻訳者のプロフィール内に表示されます。翻訳者の中には、15万ワード以上も寄付された方がいます!

それから、これは指標とはいえないかもしれませんが、TWBの成長にとても重要なものには補助金も含まれます。同組織では、近年の補助金の増加にとても満足しています! 2013年には、Indigo Foundation からWikipediaの補助金を頂きました。今年は「セーブ・ザ・チルドレン」が取り扱っているHumanitarian Innovation Fundと、とある技術補助金 (もうすぐ発表予定です) を授与されています。これら数々の補助金に深い感謝の気持ちを表すと共に、個人の皆様からもとても寛大な寄付を頂き、大変ありがたく思っております。

Gengoの翻訳者がTWBに参加するにはどうしたら良いでしょうか?

簡単です! TWBウェブサイトのボランティアページに行くだけです。GengoのPro レベル翻訳者の皆様なら、おそらくTWBの要件を既に満たしているはずです。公的サービスを主要とする当組織のプロジェクトにふさわしい資格を持った翻訳者を確保する為、Gengoと同様、TWBでも厳しい試験過程を設けています。

企業がTWBと協力することで得られるメリットとは?

まさにそれは、私達がここ数年の間に学んだことです。TWBとの取組みが、いかに企業の社会的責任 (CSR) への評価や顧客認識の向上に役立つかをあらゆる企業と話し合ってきました。しかし、ほとんどの企業がCSR評価を理由に寄付している訳ではなく、善意からして頂いてるということに気がつきました。

翻訳会社も、非常に寛大なスポンサーとして翻訳者の提供だけではなくスタッフ支援も提供して頂いてます。ハイテク業界では、Adobeがソフトウェアの寄付や人的パワーの提供などの面で、何年にも渡って支援して頂いてます。加えて、災害救済においてAdobeスタッフが24時間体制の手助けができる方法も検討して下さっています。最近いただけることになった技術補助金も、多大な援助となるでしょう。こうした企業支援は、いつでも大歓迎です!

TWBの使命において、テクノロジーの役割とは?

私達の活動は、クラウド (Crowd) なしではやっていけないでしょう。TWBの翻訳プロジェクトには、文書全体か一部の翻訳かに関わらず、世界中の人々が参加します。自動化なしでプロジェクトを行うことは不可能です。

ProZ.comが寛大にも、早い時期から同社のプラットフォームを利用させてくれ、TWBのニーズに合わせてそのプラットフォームに変更も加えてくれました。更に、加入翻訳者の自動テストを提供して頂き、ゲーミフィケーション (バッジやポイント、リーダーボードなど) の管理も担当して頂きました。本当に沢山のことをして頂いています! しかし、現時点では、私達は作業内容全てを自動化する為の十分な資金がありません。例えば、プロジェクトの分担は、ProZ.comのボランティアによって未だに手作業で行われています。品質のチェックは大きな課題です。TWBの翻訳者たちは有能な翻訳者ではありますが、手に余る量の仕事を抱えてしまい、その為質に影響が出てしまうこともあります。プラットフォームには現在、プロジェクトの質をモニターする為のツールがありません。TWBでは翻訳者用ディスカッションフォーラムを用意していますが、翻訳者の皆様の繋がりを作るためにTWBに出来る事はもっとあるはずです。まだ駆け出しの翻訳者の方々が活動に参加し、その中でスキルアップしていけるよう、もっと支援できればと思っています。以上が、今後私達が更に向上させたい分野です。

gengo_pulse_translator_quote_ja

もしも今、魔法の杖でTWBの願いを叶える事ができるとしたら、何を願いますか?

やはり、今お話した技術分野の解決法が是非知りたいですね。また、非現実的かもしれませんが、医療、エンジニアリングのハウツー、物語本など、発展途上国の人々が必要とする分野のウェブコンテンツ全ての翻訳を可能にする事も願い事のリストに含めたいですね。現時点ではまだ、その一部をかじっただけの状態なんです! 地域の方々がコミュニティー向けにあらゆるウェブページをモバイルデバイス上で翻訳できるような、インターネットベースの技術があればいいなと思います。サハラ以南のアフリカ地域内では、65%の人々が携帯電話を持っているので、理論的には情報がデバイス経由で入手可能になれば、そのような知識にアクセスできるわけです。各コミュニティーが自地域にとって最も役立つウェブコンテンツを選択できるようにする方法も必要です。また、翻訳者になる為のトレーニングを提供する拡張可能なシステムも必要です。このようなコンテンツはすでに入手可能なものも沢山ありますが、発展途上国向けにシンプルかつ合理化されたコンテンツが必要です。

Gengoではできる限りの支援をしたいと思い、TWBの技術委員会に先日参加しました。自分の能力を活用してTWBの為に貢献したいという方は、こちらからぜひボランティア登録してみて下さい。

Translators without Bordersは、米国に拠点を置く非営利非課税組織 (米国国税収入局規約の501(c)(3) 条で規定されている団体)で、知識に国境の存在しない世界を目指して活動しています。Translators without Borders (元々はTraducteurs sans Frontièresとして1993年にフランスで設立) の使命は、非営利団体をTWBの翻訳者と繋げる架け橋となると共に、現地の言語能力の向上を支援し、言語の壁に対する認識を高めることで、人々に母国語での重要情報へのアクセスを提供することです。Translators without Bordersのボランティア翻訳者たちは、以下の3分野での人道的翻訳を中心に毎年何百万ワードもの翻訳をこなしています: 災害などの非常時に人々への緊急通知を行う上で必要な非常時翻訳、NGOの運営をサポートする為の翻訳、支援を必要としている人々を直接サポートする為の翻訳。同組織は現在、ケニヤのナイロビにある初の翻訳者トレーニングセンターを通して、東アフリカの言語能力の向上に取り組んでいます。ここでは、訓練生はスワヒリ語でのヘルスケア関連コンテンツに重点を置き、翻訳というキャリアの為に必要なスキルを身につけ、Words of Relief (言葉による救済) 危機救済ネットワークに貢献しています。


Jessica Roland

The author

Jessica Roland

Jessica is Senior Director of Sales Development at Gengo. She comes from the client side of localization, with 15+ years of taking software products and websites global, for companies like EMC/Documentum, Yahoo! and Glassdoor. She loves working with industry colleagues to help influence the direction of globalization technology and practices, building toward a future where translation is everywhere!


サブスクライブする

Gengoや翻訳に関する最新情報をメールでお届けします。

Translator Resources [EN]

Get the leads of users from translator resources page.

  • このフィールドは入力チェック用です。変更しないでください。


Business Resources
ビジネスリソース

翻訳のトレンドやグローバル展開に役立つノウハウを学ぶ。

Translator Resource Page
トランスレーターリソース

Gengoで翻訳するために必要な知識やスキルについて学ぶ。

Translator Forum
コミュニティフォーラム